花様年華-oklog.

BTSのコンセプト、花様年華に関する考察記事をメインに書いています。個人的な解釈になりますが、参考にしてくださると嬉しいです。2022年現在、少しずつ記事を編集中です。ご了承ください。Twitterは諸事情により閉鎖しております。

LOVE YOURSELF

Introduce my roots.

⑬WINGS Short Film考察<#3 STIGMA>

※以下、花様年華Note・漫画 花様年華<SAVE ME>ネタバレ注意

 

前回の記事

dddona.hatenablog.com

 

今回はテヒョンのソロMV「Stigma」の考察に入っていきます。

 

目次

 

 #3 STIGMA -テヒョン

まず初めに「Stigma」というのは「汚名」「烙印」という意味がありますが、ギリシャ語で「奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴(しるし)・烙印」という意味もあるそうです。

キリスト教では、イエスキリストが十字架に張り付けにされた際に出来た傷のような「聖痕」という意味もあるそうです。

どの意味にしても、マイナスなイメージを持っています。

 

小説「デミアン」にも「罪人」というタイトルの章が、第3章にあります。

前回の記事で「カインとアベル」の話と、それに対するデミアンの話を書きましたが、この「奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴」というのはカインのしるしを指すような気がします。

カインのしるしデミアン曰く勇気を持った者の印でした。

 

 

では、冒頭のナムジュンのナレーションを見ていきます。

小説とは訳が異なりますが、今回は英文に沿った訳で見ていきます。

 

それは僕の幼少期を支えた支柱に入った最初の亀裂だった

誰もが自分自身になるために まず破壊しなくてはならないものだ

そうした亀裂や綻びは再び増大し癒され忘れ去られる、

しかし秘密の一番奥の方でそれらは生き、血を流し続けるのだ

 ーデミアン1章 二つの世界 

 

この亀裂とは一体なんだったのか。

これは主人公シンクレールがクローマーに嘘を吐いたその日、家に帰った際の一文です。

シンクレールが帰宅した際、父は彼の靴が濡れていることを咎めました。

彼は父に忍びながらも、自分の中に新しい感情が生まれたことに気がつきます。

 

人殺しの罪を白状しなければいけないのに、一切れのパンを盗んだと言って尋問されている犯罪者のような気持ちになった。

それは醜く浅ましい感情だったが、強くそして深い魅力を持っていた。 

 

シンクレールは父に対し、優越感を感じ、そしてまた父の迂闊さにある軽蔑を感じました。

それはシンクレールにとって、父に抱いた初めての醜い感情でした。

 

テヒョンのナレーションで、このシーンを入れてくるのは納得すると言いますか、個人的に腑に落ちる点がありました。

テヒョンにとって、父は初めから憎悪の対象ではなかったようです。

花様年華Noteの中に、テヒョンが父と再会した時のNoteがあります。

テヒョンは恐らくその時7歳くらいでしたが、既に父は長い間家に戻っていなかったようです。

その日、テヒョンは久しぶりに家に帰っていた父を見つけ抱き着くと、父はテヒョンを殴りつけ、壁に押し当て彼を気絶させました。

きっと、テヒョンの記憶の中の父とは大きく異なっていたでしょう。

シンクレールの件とは異なりますが、これがテヒョンにとって父に醜い感情を抱いた最初の出来事だったとも考えられます。

 

アプラクサ

テヒョンがいるのは落書きがされたシャッターの前です。

彼はドライバーのようなものを持ち、絵に突き刺していますね。

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ではその絵は何なのでしょうか。

近寄った場面では、書かれた文字を読むことができます。

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”アプラクサス”

前々回のBEGINの記事で、少しこの名前が出て来たと思います。

 

鳥はもがき苦しんで卵から抜け出そうとする

卵は世界である

生まれ出ようとするものはひとつの世界を壊さなければならない

そして鳥は神の元へ飛んで行く

その神の名はアプラクサスという

 −デミアン第5章 鳥は卵の中から抜け出そうと戦う

 

アプラクサスというのは神の名前で「善と悪を兼ね備えた二面性を持つ神」とされています。

本来同時には存在しない「光と闇」「天使と悪魔」「男と女」「人と獣」「最高の善と極悪」を成り立たせる者です。

その姿を見てみると、シャッターに描かれた絵と似ていることが分かるかと思います。

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アプラクサスは頭部が鳥、動体は人間、足は蛇の姿をしています。

デミアン」ではアプラクサスを崇拝することは邪教とされています。(悪魔を崇拝しているとも言える為)

 

そんな”神”の心臓部分を傷つけているテヒョン。

とてもアプラクサスを崇拝しているとは思えない行為です。

神に対する冒涜とも取れるこの行為は「カインとアベル」の話を思い出します。

カインは理不尽な理由で弟を殺害し、そして神に対しても嘘を吐きました。

 

私はこの時にテヒョンが卵の殻を破ったのか、と考えた時少し違うなと思いました。

テヒョンはとっくの昔に、その殻を破っているように感じます。

つまり何が言いたいのかというと、テヒョンはカインのしるしを持つ者なのではないかということです。

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警察に連行されるテヒョン。

花様年華でテヒョンが警察に追われていたシーンを思い出しますね。

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RUN

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Highlight Reel

警察は学校と同じように、秩序のある「明るい世界」に属しています。

しかしこの時のテヒョンは「暗い世界」におり、これは許されない行為です。

 

 NIRVANA

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テヒョンの着ているTシャツはNIRVANAのものですね。

過去のMVでも何度か出て来ていました。

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Prologue

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RUN

私の知る限りではMV内でNIRVANAの衣装を着ているのは、テヒョンとナムジュンのみです。(他の場面でジミンが来ていたり、ロゴの☺︎マークをソクジンが持っていたりはあるようです)

過去の記事で書きましたが、ニルヴァーナには涅槃という意味があり、涅槃は「あらゆる煩悩が消えた究極の悟りの地」または「死」を指します。

個人的には、どちらも今のテヒョンには当てはまらないような気がします。

 

過去のNoteでテヒョンがナムジュンのTシャツを借りている内容がありました。

その事からこれはナムジュンの物で、彼のことを指しているのかなと思ったり。
 

一応過去の記事も貼っておきます。

dddona.hatenablog.com

 

両親

警察署に移ってからのシーンを見ていきます。

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”名前は”

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キム・テヒョン

取り調べを受けているテヒョン。
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指で机を引っ掻いているシーンがありますね。

何かを我慢しているかのようなこの仕草は、どことなくシャッターでアプラクサスを傷つけているシーンを思い出します。(音は全然違いますけど

 

そしてここで一度シーンが切り替わります。

LIEのように、テヒョンの内面にクローズアップされたと考えています。

そしてこれがテヒョンの”もう一つの世界”

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逃げているようにも見えますが、何かを探しているようにも見えます。

 

一方取り調べを受けているテヒョンは「21歳」と答えます。

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”21歳”

あまり関係ないのですが、21歳ということにびっくりしてしまいました。笑

年齢については別の記事で書きましたが、私の考察の中では20歳に高校を卒業すると考えているので、このテヒョンは既に卒業しているんですよね・・・。

タイムリープの最中である22年では、テヒョンはまだ高校3年生の19歳だと思われるので、この時点で2年後

YEAR24でしょうか。

驚くほどに時が進んでいてびっくりしました。

私の年齢計算がそもそも間違っているのかもしれませんが・・・。

 

ただ21歳というのはMV公開時のテヒョンの年齢でもありますので、テヒョン本人のことを表しているのかもしれませんね。

 

話を戻します。

「親は」と聞かれたテヒョンは、警察官から目を逸らします。

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そしてもう一つの世界では、誰かに殴られているテヒョン。

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これは言わずもがな、父親からの暴力だと思われます。

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テヒョンの目に映るのは、子を抱く母の姿。

これは似たシーンが過去にもありましたね。

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Prologue

Prologueでテヒョンが持っていた、母親の写真です。

母親はテヒョンが幼い頃に家を出て行ってしまいました。

パーカーを着たテヒョンが何かを探している様子なのは、もしかすると母親を探しているのかもしれません。

花様年華Noteで、テヒョンがジョングクの退院パーティの後に母を探しに行くシーンもありました。

そしてこの「母」というのが「デミアン」でも意味を持ちます。

しかしこれはまた今度書こうと思います。

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殴られ続け、段々とボロボロになっていくテヒョン。

取り調べを受けているテヒョンは、親を聞かれたことに対し「そんなものはいません」と返します。

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”そんなものいません”

間に殴られるシーンが入っているのは、テヒョンの回想のように思えますね。

自分を置いて逃げた母親と、暴力を振るう父親。

そんな人たちは親じゃない。

 

電話ボックス

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シーンの切り替えで電話ボックスが映ります。

電話ボックスと言えば、ナムジュンですね。

MVでも出て来ます。

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RUN Japanese.ver

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WINGS Short Film #5 REFLECTION

Prologueの冒頭、テヒョンがナムジュンへと電話をしているシーンに関連しているかと思えます。

そのことを指しているというよりは、ナムジュンを表しているように感じます。

 

過去の記憶

直後に映る仰向けに寝ているシーンは、父と姉がいる家のシーンとリンクしています。

そしてこのシーンも少し見覚えがありますね。

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RUN Japanese ver.

そして直前にナムジュンに関連した電話ボックスが映ったことに絡めるならこのシーン。

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I NEED U

しかしもう、隣にはナムジュンはいません。

時系列で考えると、やはりナムジュンとソクジンと喧嘩をした後なのかもしれませんね。

本当の兄のように思っていた存在に、裏切られたように感じたあの日以降、テヒョンは孤独だったのかもしれません。

 

目が覚めたテヒョンはそっと姉を抱きしめます。

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傷のないテヒョンと、傷だらけの姉。

姉はテヒョンを庇ってくれていたのかもしれませんが、テヒョンは姉を救うことが来ませんでした。

 

警察官が水を飲む仕草が父と重なり、テヒョンは目を逸らします。

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あの時何故あんなことをしたの

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”あの時何故あんなことをしたの”

これはStigmaの曲中にもあるセリフです。

Stigmaの歌詞もそうですが、これは誰に宛てた言葉なのでしょうか。 

 

⑴ 母親

ひとつ考えられるのは、母親に対してです。

花様年華Noteの中で母親に会いに行くというテヒョンが「何しに行くの?」と言う姉に対し「聞いてみるんだ。一体何を考えているのか。なぜ出て行ったのか。なぜ現れたのか」と答えているシーンがあります。

この”なぜ現れたのか”というのが気になります。

母親は出て行ったきり会っていないはずなのに、また再会したかのような言い方。

夢の中で出会ったのかもしれませんが、これについては全く記載がありません。

可能性としてはありえるかなと思います。

 

⑵ソクジン

もうひとつの考えとしてソクジンに宛てた言葉とも考えられます。

 

”あの時何故あんなことをしたの”

”ごめん”

 

続きの歌詞である、この”ごめん”という台詞はすごく見覚えがあります。

日本語版「血汗涙」のMVでテヒョンとソクジンが喧嘩をしているシーンです。

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このシーンでソクジンは「ごめん」と言っているんですよね。

前にEuphoriaの記事か何かで、このシーンは海に行った日に喧嘩したシーンに見えると書いたと思いますが、少し違うようにも思えますね。

個人的にこのシーンを何か関係があるのではないかと思います。

”ごめん”と言っているのがソクジンだとして、テヒョンが聞きたかった「あの時」とはいつのことか。

 

考えられる事として、高校時代にソクジンが校長に自分たちの報告をしていた事でしょうか。

テヒョンはたまたまその場に居合わせ、ソクジンと校長が繋がっていたこと、そしてユンギが退学になった本当の理由を知ってしまいました。

それは彼らが離れ離れになるキッカケでもありました。

テヒョンは知りたかったはずです。

どうしてソクジンがそんな事をしていたのか。

どうして自分たちを裏切るような行為をしていたのか。

 

私の考察としては、この説が一番有り得るかなと思っています。

ナムジュンや父親を候補から外したのは、理由として弱いかなと思ったからです。

ナムジュンがテヒョンに対して具体的な何かをしたというのはあまりなく、また父に対しては「あの時何故あんなことを」という「あの時」が瞬間的な意味を持つので、何年にも渡って暴力を受けている相手に対しては不適切かなと感じました。

 

そう言ってみても、何故ここでソクジンが出てくるのかといった疑問はあるのですが・・・。

 

 

白い子犬

場面は変わり、テヒョンの元へ白い子犬がやって来ます。

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この白い犬は過去のTeaserにも似たシーンがありました。

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テヒョンの上着もすごく似てますね。

ちなみにですが、花様年華THE NOTES1の最後のページにも関連した資料が乗っています。

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迷子犬のチラシです。

白い犬が行方不明になったと書かれており、年齢や名前、居なくなった日などが書かれています。

 

犬:オス・12ヶ月・名前 ”とうふ”

居なくなった日:10月7日

人懐っこい愛情表現が多いです。大切な私の家族です。

目撃された方は是非連絡をお願いします。

 

分かる部分しか訳していませんが、こういった感じです。

このワンちゃんは何を表しているんでしょうか。

 

古代エジプトで白い犬は「死を司る者」とされていたようです。

また中世のヨーロッパでは魔除けの存在として神聖視されていたそう。

 

テヒョンとの共通点を考えてみます。

犬の年齢で12ヶ月は、人間で換算すると大体15〜18歳。

高校生くらいですので、花様年華のテヒョンと同じくらいだと思います。

 

そして居なくなった日ですが、いろいろ見てみましたが花様年華Noteでは特にこの日は見つかりませんでした。

しかしMV中に映る、テヒョンの家のカレンダーが10月なんですよね。

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(横になってしまった)

一応いつのカレンダーなのか日付で調べてみましたが、2016年の物のようです。

MVが公開された年のものですね。

このワンちゃんが居なくなった日と、MV中のカレンダーが同じなのは意味がありそうです。

人懐っこい性格はテヒョンと似ていますね。

 

テヒョンが犬を抱いていると、上から檻が降りてきます。

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その直後には、姉を殴る父親の姿が。

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次に映るのはDangerのMVのテヒョンですね。

ここも繋がっているんですね・・・。

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テヒョンは姉を殴りつけた父を睨みつけます。

テヒョンのこういった表情は、シリーズ通してよく見る気がします。

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警察官の姿が父に重なり、父のことを思い出したテヒョン。

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DangerのMVは続き、テヒョンが髪を切るシーンがあります。

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髪を切るのは、新しい自分に生まれ変わるためだったり、何かとの決別って所だろうかと思うのですが、どうでしょうか。

イメージとしては「卵の殻を破る」に近い気がします。

 

檻が完全に降りると、テヒョンは上を見上げます。

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見ているのはもう一人の自分でしょうか。

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そこに父や姉の姿はなく、テヒョンは手に持っていた瓶を落とします。

ここでもカレンダーを確認できます。

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瓶が割れる音がしますね。

このシーンはBEGINとも似ています。

WINGS Short Filmでこの”割れる音”が入っている人物が何人かいます。

ジョングクのBEGINの考察では、この音は鏡が割れる音で、それはジョングクが卵の殻を破った”ということではないかと書きました。

 

割れた音 = 新しい道が開かれた

 

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そして子犬は去り、テヒョンだけが檻の中へと取り残されます。

 

 

ここまでを一度整理して見てみます。

 

パーカーを着ているテヒョンは、どこか幼さと頼りなさを感じます。

これはテヒョンの過去、幼少期を表しているのではないかと思います。

白い犬はもう一人のテヒョンであり、大切な家族の象徴だと思われます。(魔除けの存在などの意味もあるのかもしれませんが)

もう一人のテヒョンというのは、まだ何も知らなかった無邪気な自分。

人懐っこく感情が豊かなテヒョンが、まだそのままで家族と入れた時かもしれません。

しかしそれは、父親が帰って来て、母が出て行った時に変わってしまった。

もうその時のテヒョンには戻れないのです。

 

10月2日に関してですが、可能性があるのは母親が家を出て行った日でしょうか。

この日の時期を見出すのは情報が少なく困難です。

ただ「行方の分からなくなった母」と「迷子犬のチラシ」は関連しているようにも思えます。

母親が家を出て行ったのは、19歳のテヒョンが”10年以上前”と言っていますから、相当昔の出来事です。

 

この日を境に家族というものを失ったテヒョン。

”両親、そんなものいません”

そう答えたテヒョンの気持ちを考えると・・・・。

 

テヒョンはまだ学生で、父に対抗する術も逃げ出す勇気もなく、まさに逃げ場のない檻の中にいるような日々。

テヒョンはもうずっと長い間、そこに閉じ込められていました。

テヒョンはジミンやホソクと比べ、過去の記憶に囚われているというよりは、どうにもならない現状に囚われていた気がします。

檻から逃げ出した子犬は、自分を置いて逃げた母親を表しているようにも思えます。

 

そして次に前髪を切っているシーンと、家でのシーンですね。

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この二つのシーンから感じられるのは、テヒョンが何か決意を固めたのではないかと言う事。

父の暴力シーンは過去の回想とも思えます。

そしてその場のテヒョンが瓶を割るシーン。

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決意を固めたテヒョンは卵の殻を破り、カインのしるしを持つ者となったのではないでしょうか。

では具体的に、どうやって殻を破ったのか。

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I NEED U

父を殺すこと。

瓶を割るシーンと言えば、INUに忘れもしないシーンがありました。

テヒョンは姉を、そして自分を救うために父を刺しました。

正しいやり方ではありませんでしたが、そこには強い意志があったことでしょう。

 

デミアンの第3章「罪人」で、デミアンゴルゴタの丘に関する二人の罪人の磔話に対してこう言っていました。

 

始め彼は罪人で、悪事を働いた。その男が弱気になって、悔い改めの、哀れっぽい儀式をした!

墓場の二歩手前でそんな悔悟をしたところで、どんな意味があるだろうね?

 

もし君が今日ふたりの罪人のうち、ひとりを友達に選ばなければならないとしたら、この哀れっぽい改宗者の方じゃないことは確かだ。

いや、もう一人の方だ。

そいつはいっぱし男で、性根を持っている。

彼は改宗なんか歯牙にもかけない。改宗は、彼の身の上になってみれば、体裁のいいお題目にすぎないんだ。

彼は彼の道を最後まで歩み、最後の瞬間になって、卑怯にも、それまで彼を助けて来た悪魔と手を切ったりなんかしない。

彼は性根のあるやつだが、性根のある人間どもは、聖書の物語の中ではとかく損をしがちだ。

たぶん、彼もカインの子孫なんだろう。

 

デミアンは罪人であっても、勇気と自分自身を持った人間を評価していました。

どこかテヒョンの現状と重なる部分があります。

父を殺すということは、悪魔の誘惑だったのかもしれません。

そしてテヒョンは、悪魔へと手を伸ばした。

 

ソクジンのタイムリープによって、テヒョンが父を殺害する未来は無くなりました。

しかし、未遂で終わったとは言え同じ事件は起きています。

テヒョンの中から、その衝動が消えたわけではないのだと分かります。

 

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ここは自分と違う言葉を話すクジラばかりだ

 

これは「Whalien52」の歌詞です。

私の解釈としては「明るい世界」に存在している時のテヒョンの気持ちを表しているように思えます。

自分とはまるで違う、それこそ世界が違う。

悪と手を結んでしまったテヒョンにとって、明るい世界は居心地が悪いことでしょう。

 

 

最後、テヒョンは警察官に「電話をさせてください」と言い終わります。

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父を刺してしまいそうになった所を、ホソクに助けられた日のテヒョンの日記に、この時のことについて書かれています。

 

気を取り直してみると、無意識にナムジュン兄さんの電話番号を見下ろしていた

こんな状況に至っても、いやこんな状況だからこそ、尚更兄さんの存在が切実だった

兄さんに話したかった

 

”兄さん

僕が、父を、僕に命をくれた父を、僕を毎日、所構わずむちゃくちゃに殴った父を殺しかけました

本当に殺しかけたんです

いや、本当は殺しました 何度となく殺しました

心の中では数え切れないほど殺しました

殺したいです 死にたいです

これからどうしたらいいのか、何も分かりません

兄さん、今会いたいです”
 

テヒョンはナムジュンに助けを求めていたんですね。

ナムジュンは、テヒョンを気にかけていましたが、本人が話してくれるまで待とうと思っていました。

テヒョンは父の暴力についても、母についても誰にも言っていなかったからですね。

そんなテヒョンが初めてナムジュンに出したSOSが、この電話だったのでしょう。

しかし、この電話は繋がらなかった。

 

テヒョンのロゴ

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テヒョンのロゴは切り込みが入ったような形です。

冒頭のナムジュンのナレーションにあったように、これはテヒョンの中に入った最初の亀裂だったのかもしれません。

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こうして卵は三つ揃いました。

 

 

まとめ

  • STIGMAはテヒョンが卵の殻を破るまでが描かれている
  • テヒョンはカインのしるしを持つ者
  • 自分と姉を守るために父を殺すことで、テヒョンは卵の殻を破った
  • テヒョンは悪魔の手に堕ちた

 

いかがでしたでしょうか。

あまりにも個人的解釈が過ぎましたかね。笑

とても楽しかったです。

子犬の解釈については今後変わりそうな気もしています。

漠然と抱いていた「テヒョンはなんか違うな」と言う気持ちの理由が、今回の考察でようやく分かったのですっきりしました。

 

次回はFIRST LOVEです。

 

dddona.hatenablog.com