花様年華-oklog.

BTSのコンセプト、花様年華に関する考察記事をメインに書いています。個人的な解釈になりますが、参考にしてくださると嬉しいです。2022年現在、少しずつ記事を編集中です。ご了承ください。Twitterは諸事情により閉鎖しております。

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Introduce my roots.

⑯WINGS Short Film考察 <#6 MAMA>

※以下、花様年華Note・漫画 花様年華<SAVE ME>ネタバレ注意

 

前回

dddona.hatenablog.com

 

今回はホソクのソロ曲「MAMA」について考察します。

 

目次

 

 #6 MAMA -ホソク

 ではまず、冒頭のナレーションを見ていきましょう。

 

永遠に歳を取らないかのような

彼女の息子とそっくりな顔で

内面の強さも満ちた品のある美しい女性が微笑んでいた

彼女は帰郷したものを出迎えるように満足げに見つめていた

僕は黙ったまま彼女に両手を差し出された

 -デミアン第7章 エヴァ夫人

 

この日は、シンクレールがデミアンの母親に初めて会った日の文章です。

デミアンの母は、シンクレールにとって特別な存在になります。

そして彼女は自身のことを「エヴァ夫人」と名乗ります。

エヴァ夫人はデミアンと同じく、カインのしるしを持つ者であり、シンクレールが当時描いていた夢像そのものでした。(夢で見ていた理想の存在のこと)

 

MAMAではタイトルの通り、このエヴァ夫人に関連したものも出てきています。

 

ミュンハウゼン症候群

ホソクがいるのは、閉鎖病棟だと考えられます。

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見た目からして監獄のようにも見えますが、内側にドアが無いことや、その後医者のような人物がカルテを書いていることから精神科病棟の可能性が高いです。

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このカルテから分かることは、ホソクは「ミュンハウゼン症候群」だと言うことです。

ミュンハウゼン症候群というのは、周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自分の体を傷つけたりする精神疾患の1つです。

 

ホソクは花様年華から今まで、薬を飲んでいたり倒れたりといったシーンがありました。

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I NEED U

これは「ナルコレプシー」という、起きている間に自分では制御不能な強い眠気に襲われてしまう睡眠障害の1つだと言われていました。

現にホソクもそう言っていたようです。

それが原因で倒れることの多かったホソクは、怪我で入院することも珍しくありませんでした。

 

しかし、これについて花様年華Noteでホソクはジミンに「自分のナルコレプシーが嘘だった」と言うことを打ち明けています。

正しくは「わざとそうしたわけじゃない。でも良くなる方法があるという事実を知っていながら、顔を背けたと言うべきか」と言っています。

 

恐らくですが、幼少期に母に捨てられたことが原因でホソクは昔からこの”ミュンハウゼン症候群”を患っていたのだと考えられます。

そして年を増すごとにそれが”ナルコレプシーを装う”という方法(症状)になったのだと思います。

 

そのホソクがミュンハウゼン症候群として入院しているということは、彼が顔を背けてきた治療を受けていると言うことです。

つまりホソクは自分自身と向き合うことにしたのです。

 

時計が1時を指すと、部屋に大量の薬が流れてきます。

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INUで飲んでいたのは真っ白の錠剤だったのでした。

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I NEED U

ミュンハウゼン症候群の治療法として薬物療法はあまり用いられいないようなので、これは当時服用していた睡眠薬だという考え方もできます。

睡眠薬誘惑の象徴です。

 

睡眠薬の服用によってナルコレプシーを引き起こしていた為、ミュンハウゼン症候群の治療ではその薬を断つことから始めるはずです。

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しかしホソクはそれを口にしています。

ホソクが薬を服用すると、グラスに薬が一粒落ちます。

これはジミンのMV中にも映っていたものですね。

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飲んだ薬が彼の体の中に落とされたような描写です。

 

サイケデリック体験

ホソクが薬を飲むと、彼の目が開き、その瞳の中にアプラクサスが浮かびます。

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これはテヒョンがSTIGMAで心臓をガリガリ傷つけていたものですね。

ホソクはアプラクサの姿を見ています。

 

その後、ホソクに見えている世界が一変します。

色彩は派手で鮮やかになり、音楽もここから始まります。

これは幻覚剤によるトリップ状態と非常に似ているように感じます。

幻覚剤は時に治療薬としても用いられていることから、ホソクが口にしたのはそれだとも考えられますね。

 

そしてこのサイケデリック体験というのは、グノーシスのような性質があり、意識を高め個人的な発達に深く貢献するような学習体験とも言われているようです。*1

つまりホソクは自分と見つめ合う(自己の探求)のために、薬を服用したと考えられます。

一般的に良しとされていない幻覚剤ですが、これにより精神疾患の原因となっていた内心の理解が深まったという事例もあります。

ミュンハウゼン症候群の治療法として処方されたかは不明ですが、強引なやり方として自身の内面と向き合っているシーンと考えられます。

 

不安そうな表情や暴れているところを見るに、バッドトリップだとも思えます。

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ホソクに見えているものが描かれています。

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周囲の目。

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書き殴られたような字で埋め尽くされる画面。

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管のようなものが身体に巻きついているかのよう。

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そして羽。虫の羽のようにも見えますが、鳥の羽?でしょうか。

床にたくさんの羽が落ちていることから、以前に書いた天使の羽とも考えられますし、虫として考えると関連があるのは蝶ですかね。
これらは全てホソクが見ている、感じている幻覚だと思います。

 

ホソクはその場所から出ようと暴れ出します。

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そしてその後、先ほどの医者の時のように、扉の覗き口からホソクと目が合うと彼は倒れ込みます。

薬が誘惑と考えると、医者は悪魔のようにも思えます。

見ているのは医者か、悪魔か、ホソク自身か、そんなところだと考えています。

視点が人ではありえない視点ですから、人では無い存在かなと思ったり。

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自己を見つめ直すと言う点から考えると、目が合ったのはホソク自身の可能性が高いですかね。

 

エヴァ夫人

ホソクが目を覚ますと、トリップは終わっていました。

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ただ、壁や床はそのままですね。

夢や幻覚と思えたそれは現実であったとわかります。

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光が差し込む扉の覗き窓から外を見ると、一枚の絵が飾ってあります。

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ジミンのLIEでも置かれていた森の絵ですね。

この事からLIEでジミンがいた場所と同じ場所との推測もできます。

元々ジミンは精神科病棟に入院していましたから、ホソクもそうなったのだと考えれば同じ場所に入院していてもおかしくありません。(花様年華Noteで二人が再会したのはたまたまジミンが外科病棟に移されていたからです)

長閑な水や鳥の鳴き声が聞こえますね。

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開かなかったはずの扉はいとも簡単に開き、ホソクはその絵を見つめます。

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その後に映る文字。

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空は青く 日差しは輝いて

 

これは「I NEED U」の歌詞ですね。

ホソクが「明るい世界」へと戻ってきたかのように感じます。

 

薬が詰まったポケットから取り出したのは、スニッカーズ

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これはホソクが幼少期、母に遊園地で置き去りにされる時に、一緒に母に渡されたものと言われています。

実際に花様年華Noteなどにそう書かれていたわけではないのですが、スニッカーズが頻繁に登場し、このシーンでも似た物が確認出来ることからそう言われています。

また「デミアン」で10歳のシンクレールが悪童クローマーにより精神が追い詰められ熱を出した時、彼の母親がシンクレールに渡したのもチョコレートでした。

チョコレートはご褒美として渡されるもので、様子のおかしいシンクレールを宥めるために母親は渡したのです。

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Highlight Reel

この時のホソクの隣に置かれているものがスニッカーズです。

他にも過去のteaserもホソクがスニッカーズを食べているシーンがあります。

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TRILOGY EPISODE Ⅰ

恐らくホソクの好物、もしくはご褒美の品だったのでしょう。

因みにこの画像の左上にある看板が「プルコッ樹木園」の看板です。

プルコッ樹木園はジミンのトラウマとなった場所です。

そしてまた、森の絵もそれを表していると考えられます。

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ホソクは森の絵をみて微笑みを浮かべ、去っていきます。

その後、絵に浮かび上がったのは子を抱く母の姿。

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右下に「EVA」という文字が見えます。

これは冒頭にも出てきていたデミアンの母「エヴァ夫人」だと考えられます。

そしてこのエヴァ夫人の絵を、テヒョンもSTIGMAで見ています。

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STIGMA

似ているシーンはPrologueにも。

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Prologue

テヒョンが持っていた母の写真ですね。

7人の中で母を亡くしているのは、ユンギとソクジンですが、母に捨てられたのはテヒョンとホソクでした。

どこかでまだ生きていると分かっているからこそ、未練が募り、自分が捨てられたのだという思いも強くなるように思えます。

悲しい話ですが、そこが二人の共通点とも言えるでしょう。

 

シンクレールはエヴァ夫人と出会い、まもなく彼女を愛するようになります。

しかしWINGSのMVではそういった意味を持っているとは考えにくいです。

恋をしている相手ではなく、母としての意味を大きくを持っているように思えます。

 

そして同時に、シンクレールにとってエヴァ夫人は「彼女は私の内心の象徴であるにすぎず、私をひたすらより深く私自身の内部に導こうとしているのだ」と言っています。

つまりエヴァ夫人は、自己探求の助けとなっている存在ということです。

現にシンクレールは彼女と出会い、さらに深く自身について知ることとなります。

 

ホソクの卵

ホソクがミュンハウゼン症候群になってしまったのは、母に捨てられたことが原因でした。

テヒョンとホソクの違うところは、未練の強さのように感じます。

テヒョンはそれ以上に父の存在が大きく、母に対しても「とっくの昔に捨てたくせに、今更母親ヅラでもするつもりなのか?」と言っており、会いたいと言う思いはないように感じます。諦めてしまっているのかもしれませんが・・・。

その点、ホソクは母に似た後ろ姿を追いかけてしまったり、未だ母への思いに取り憑かれてしまっています。

 

「ウソをついていたことがある」

ジミンにだけでなく、誰にも話していなかった

僕のナルコレプシーがウソだと言う事実を

もしかしたら、だから誰にも何も聞けなかったのかもしれない

相手を傷つけそうだからではなく、僕がウソを隠しているから、

それを話す勇気がなくて

そして、それを話したら、単に養護施設という家に母がいないだけでなく、

この世のどこにも母と呼べる人がいないことを認めざるをえないから、

友達の誰の状況も、誰の事情も聞かなかったのかもしれない

 

ホソクが病室から出たと言うことは、自分の殻を破ったからだとも考えられます。

”母に捨てられたこと”、どこを探しても”自分の母”はもういないということ、それを認めることが出来ず、いつまでも母の痕跡が残っているかのように病気を発症させていたのかも知れません。

そうすることで、どこからか噂に聞いた母が戻ってくるかもしれない。

そしてまた、自分の中から母に残された何かが残っていることが、自分にとって救いとなっていたとも考えられますね。

 

しかし、本当は気づいていました。

この世のどこにも母と呼べる人がいないことを。

それを認め、受け入れること。

これがホソクの卵の殻を破り、そしてミュンハウゼン症候群を治すために必要なことだったと考えられます。

ホソクの最後の微笑みから、彼はその思いを昇華させられたように取れます。

 

病の原因にもなっていた母の存在は、エヴァ夫人へと姿を変え、自信を知る手がかりとなってくれた。

私はそのように思えます。

 

そして森の絵がエヴァ夫人へと変わったことから、ジミンの存在も浮かびます。

ジミンはホソクの嘘を知る唯一の人物で、階段に落ちそうになったホソクを救った人物でもあります。

ホソクは母とジミンの助けもあり、卵の殻を破ることが出来たのはないでしょうか。

 

ホソクのロゴには「eva」という文字が読み取れます。

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これはWINGSのペアともなっているテヒョンの卵と混ざります。

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合わさった柄は水に濡れた絵画のようにも見えます。

なんですかね?雨?霧?

 

まとめ

  • MAMAはホソクが自分と向き合っているシーンが描かれている
  • 薬は誘惑の象徴
  • ホソクはミュンハウゼン症候群を患っていた
  • ホソクは事実を認め受け入れることで卵の殻を破った

 

いかがだったでしょうか。

あっさりしすぎていましたかね?

エヴァ夫人の存在が独特なので、解釈が難しかったです。

エヴァ夫人のような存在は花様年華には出てきていないので、誰かに喩えて置き換えることができず・・・。

Highlight Reelでホソクが幼なじみの彼女に母の面影を見ていたのは、夢で見ていた人物に夫人が似ていると感じたシンクレールのようだとは思いました。

 

しかしテヒョンとホソクの共通点として、母の存在が卵の殻を破る要因になったことは確かだと感じました。

そう考えると、エヴァ夫人のように彼らにとって自分に向き直るよう導いてくれたのが母だったのではないかと思います。

 

次回は最後、AWAKEです。

*1:グノーシスというのは、古代ギリシア語で「認識・知識」を意味する。 グノーシス主義は、自己の本質と真の神についての認識に到達することを求める思想傾向にあたる。Wikipediaより引用。「デミアン」の思想はこれに非常に似ている。