⑮WINGS Short Film考察 <#5 REFLECTION>
※以下、花様年華Note・漫画<SAVE ME>ネタバレ注意
前回
今回はナムジュンのソロ曲「Reflection」の考察に入っていきます。
目次
#5 REFLECTION -ナムジュン
冒頭のナレーションから見ていきましょう。
小説の訳では長文になりますので、今回も英文の訳を見ていきます。
家の中の半分は異世界の領域と重なり合っていた
完全に違う物として恐れや好奇心を掻き立て
悲惨さや神秘的な物たちが多く混じり合い
屠殺場と監獄、酔っ払い達と口汚く罵る女たち、お産する雌牛、死にかけの衰弱した馬、
押し込み強盗、殺人、自殺の物語だ
ーデミアン第1章 二つの世界
これはまだ「明るい世界」に身を置いていたシンクレールが感じていた「暗い世界」の具体的な事柄をあげています。
これについては本当にそのままで、特にこれといって考察はありません。
ただナムジュンのMVでこの言葉が使われているというのは、ナムジュンがその事に気づいているからだと考えられます。
ナムジュンは誰よりも自分自身について考えていると思えるからです。
コンテナ
ではMVの内容に入っていきたいと思います。
はじめに写るコンテナは、RUNに出てきたものと同じですので、ナムジュンが住処にしているコンテナだと考えられますね。
ハイタカの絵
コンテナの中にいるナムジュンが取り出したのは、封筒に入った絵。
ハイタカの絵が描かれています。
これはBEGINでジョングクが封筒に入れていたものでした。
ジョングクは「卵から出ようとするハイタカの絵」をナムジュンへと送った事がわかります。
BEGINで少し書いたかと思いますが「デミアン」でこういったシーンがあります。
シンクレールはこの絵をデミアンに送ろうとします。
しかしその時もうデミアンがどこに住んでいるかシンクレールは知らなかったため、宛先を昔の物にして送ったのです。
本来ならば届くはずのないそれは、不思議なことにデミアンへと届けられ、そしてまた不思議極まりない方法で返事がきました。
この話に沿って考えてみると、ジョングクにとってナムジュンはデミアンのような存在ということが分かります。
現に花様年華Noteでも、ジョングクはナムジュンに「僕も兄さんにみたいになれるでしょうか」と聞いたシーンがあります。
ジョングクにとって、ナムジュンは大人で憧れの存在だと考えられます。
そしてまた、一つジョングクとナムジュンの共通点があります。
ナムジュンの右腕に入っている文字。
これはBEGINSのコンセプトフォトでジョングクの腕にも似たものが入っています。
はっきりと見ることは出来ませんが
ジョングク:B0612+JK
ナムジュン:B0612+RM
と書いている事がわかります。
0612というのは、BTSのデビュー日であり花様年華では皆で学生の時初めて海に行った日ですね。
Bは「BTS」の頭文字、もしくは「Birth」とかでしょうか。
ナムジュンが絵を見たあと、小窓から空を見ます。
そしてBEGINでも映った、赤い空を飛ぶ鳥の姿。
鳥はアプラクサスに向かって飛びます。
飛んでいるのはジョングクのハイタカだとも考えられます。
タトゥー
ナムジュンがタトゥーを入れているシーンは、Dangerにもありました。
結構Dangerのシーンが出てきますね。
腕に入れているのは、ハイタカの絵。
この時に見えている茶色い紙に書かれた羽のような模様は何でしょうか。
すごく既視感があったのですが、思い出せず・・・。
ナムジュンは左腕に「卵から飛び出ようとするハイタカ」のタトゥーを入れました。
どうしてこんなことをしているのか。
燃やして飲む
その後、ナムジュンはハイタカの絵を燃やし、コップの中へと入れ飲み始めます。
全くもって奇妙な行動ですが、似たシーンが「デミアン」の中にありました。
それはシンクレールがハイタカの絵を描く原因となった夢でした。
その夜、私はデミアンと紋章の夢を見た。
紋章は絶えず変わった。
デミアンはそれを両手にとっていた。
小さく灰色だったかと思うと、ひどく大きく多彩だったが、いつも同じものだと、彼は私に説明した。
最後に彼は、その紋章を食えと、私に強要した。
それを飲み込んでしまうと、飲み込まれた紋章の鳥は私のからだのなかで活動を始め、私のからだじゅうにひろがり、内から食いへらしだした。
それを私は非常な驚きを持って感じた。
死にそうな恐怖でいっぱいになって、私は飛び上がり、目を覚ました。
この後のシーンは、BEGINへと繋がります。
シンクレールはハイタカの絵を描き始め、デミアンに送るのです。
この夢が、そしてナムジュンの行為が表していることとはなんでしょうか。
夢の内容は「紋章を食べ自身の体内に鳥を入れる事で、鳥が体内を食い身体から出ようとする」ということを言っていると思います。
つまり身体は”自分の卵の殻”で、この行為はめちゃくちゃ強引に自分の卵の殻を破る方法だと考えられます。
そしてそれは死にそうな恐怖を伴う行為だということ。
ナムジュンがしているのも、同じことと言えるでしょう。
タトゥーで腕にハイタカの絵を入れ、ハイタカの絵を飲み干すのは”鳥を体内に入れる事”を表し、ナムジュンはその鳥に己の殻を破らせようとしています。
ナムジュンは何故そんなことをしているのか。
他の人と比べ、ナムジュンは最も安定しているように感じます。
ナムジュンは貧困な家庭環境にありましたが、彼にとっての問題はそれが占めていたっわけではなく、彼は「自分という存在」について向き合い悩んでいる青年でした。
ソクジン兄さんには大丈夫と言ったが、そんなはずはなかった
事故に遭ったジョングクが大丈夫なはずがなく、
あの日の夜のことを全て受け止められるはずがなかった
あの日の夜、テヒョンとソクジン兄さんがケンカをしなかったら、
あの日の夜、俺が皆のそばに残っていたら、
あの日の夜、誰か1人でもジョングクと一緒だったら、
交通事故など起きなかったかもしれない
それなのに俺は大丈夫だと言った
自分には全く責任がないかのように日常的な会話をして、
ジョングクの肩をぽんと叩き、早く元気になれと言った
それが幸運を祈る言葉であるかのように、アドバイスであるかのように、
慰めであるかのように言った
するべき質問の前で、全ての岐路で俺は何も選択できず、
ぼんやりと立っていた
自分の現状を最も客観視しているのはナムジュンだと思えます。
ナムジュンは自分が優れた人間ではないという思いから、頼りにしてくれる友人に対して嘘でも何かを約束してあげることができませんでした。
「何処にも行かないでください」とテヒョンに言われても「行かない」とは言えなかったり、「兄さんのような大人になりたい」と言われても「なれるよ」とは言えなかったり。
テヒョンが父から暴力を受けていたことにも気付いていましたが、ナムジュンがそれについてテヒョンに聞いたことはありませんでした。
言いたがらない彼の口を割って言わせてまで、自分がテヒョンの何かを変えられるとは思えなかったのかもしれません。
ナムジュンは人の深くまで入り込むことをしませんでした。
ナムジュンがタトゥーを入れ、こうして無理やり卵の殻を破ろうとしているのは、彼自身がこの現状に気づき、打破したいと考えたからだと思えます。
テヒョンを除き、最も自己探求をしておりアプラクサスに近いのはナムジュンだと思います。
彼にとって、卵の殻を破る方法が、この行為だったのでしょう。
鏡
ナムジュンは絵を飲んだ後、崩れ落ちます。
そしてその後映る文字。
今お前の鏡の中には誰が見えてるんだ
これは「NO MORE DREAM」の歌詞ですね。
鏡というキーワードが気になります。
シリーズ通して鏡というのはよく出てきていますが、この場合は何を指しているのでしょうか。
ナムジュンの腕がだんだん多彩な色に蝕まれていきます。
ハイタカに侵食されているということですかね。
この時に鳴っている「ピーッピーッ」と言う音は電話の音っぽいですよね。
ナムジュンが目を覚ますと、ガラスが破れます。
このシーンは、ジョングクの時と同じ考察ができます。
カーテンを開けて鏡を割れば
破片の中に道が開かれる。
これはWINGSのVCRにあった言葉です。
ナムジュンが新しい道を開き、そして卵の殻を割った音。
鏡というのは反射して自分の姿を映すものですので、それは二つの世界に生きる自分自身を映していると考えられます。
今、鏡の中に映っている自分は誰なのか。
まさに自己探求の世界です。
鏡が割れる
目覚めたナムジュンは書かれた文字を見ています。
生き残らなければならない
これは過去のMVでも出てきており、ナムジュンが学校をやめる時に後者に残したものであり、彼の信条でもあります。
ナムジュンが目覚めた場所は、同じコンテナの中でしたが様子が違っています。
前面がガラス張りの中で目覚めます。
まさに自分しかいない場所、そして嫌でも自分と向き合わなければならない場所。
ナムジュンはそこで耳を塞ぎます。
するとガラスが割れ始める。
途中で花火が映ります。
花火といえば花様年華NOTE1では、皆で花火大会に行く日(8月30日)で小説が終わりますが関係があるのかはわかりません。
花火が爆発する(?)ような大きな衝撃により、ナムジュンの鏡は割れ、彼は卵の殻を破る。
直前のシーンと関連付けると、この鏡張りの世界はタトゥーを入れていた世界のナムジュンと反射した、もう一つの世界でしょう。
つまりは彼の内側。
電話
鏡が割れると電話の音が聞こえるようになります。
さっきまでは電話が切れた「プーップーッ」という音でした。
ナムジュンはその音に向かって走り出します。
辿りついたのは電話ボックス。
STIGMAにも出てきていたものです。(電話ボックスについてはSTIGMAで書きましたので割愛します)
電話ボックスに着いたものの、ボックスには鎖がかけられ出ることができません。
ナムジュンはその事にひどく苦しんでいます。
そして電話ボックスに「LIAR」の文字が。
電話を鳴らしていたのは誰だったのか。
想像しやすいのはテヒョンですね。
現にテヒョンは殺人を犯した後にナムジュンに助けの電話をかけています。
実際の過去では、ナムジュンはそれに出る事ができませんでした。
彼は客と揉めたことにより、拘置所にいたからです。
その後タイムリープによって、テヒョンの殺人が未遂で終わった時、テヒョンはナムジュンに電話をしていたようです。
ナムジュンがそれに出たのかどうかが微妙な所で、それに関しての日記が全くないんですよね。
ただ少し別の見方をすると、テヒョンにとっては意外な形でナムジュンから返事がきたようにも思えます。
事件が起こってから2日後、皆で海に行った日に宿所に行く迄の間、家族と電話をしていたナムジュンの言葉をテヒョンは偶然耳にします。
兄さんの話に間違いはなかった
僕は兄さんより、わずか1つしか年下でなく、本当の弟でもなかった
自分のことを自分でしなければならないというのも、その通りだった
でも寂しかった
テヒョンに向けた言葉ではありませんでしたが、ナムジュンに助けを求めたテヒョンにとって、この言葉は突き放されたように感じたはずです。
結局この言葉がきっかけで、テヒョンはナムジュンに当たり、二人は連絡を取らなくなっていきます。
また過去の話では、ナムジュンが高校を辞め引っ越していた時。
スクーターで宅配バイトをしていた時の話で、勝手に”テヒョン”と呼んでいたテヒョンにいた男の子がいました。
その子はテヒョンとも似ており、時たま顔に痣を作って現れ、その日もそうでした。
ナムジュンと彼はライバルでしたが、その日の”テヒョン”は少し様子が違い、宅配に行こうとするナムジュンに「頼みがある」と打ち明けるんです。
しかし丁度タイミング悪く、ナムジュンの元に父の具合が悪くなったと連絡がきます。
そしてナムジュンは彼の頼みを聞く事なく、その場を後にするのですが、結局その直後に彼は交通事故で亡くなり、ナムジュンが彼の頼みを聞くことはありませんでした。
恐らく、その頼みは”テヒョン”のSOSだったのではないかと考えられます。
そしてナムジュンはそれに気付かなかった。
テヒョンの話も似ています。
事件を起こして初めてテヒョンはナムジュンへとSOSを出すが、ナムジュンは受け取ることが出来なかった。
電話に出られなかったことが悪いのではなく、気付いていたのに助けを差し伸べることが出来なかったと言う点が、ナムジュンにとって深い傷となっていると考えられます。
テヒョンが自ら話してくれるのを待っていましたが、結局それでは遅かった。
そうしている間に事は進み、”テヒョン”は死に、テヒョンは事件を起こした。
LIAR
電話ボックスに書かれている「LIAR」と言う文字。
嘘つきという意味ですが、これは何を表しているのか。
直接ナムジュンに対して「嘘つき」と言った人はいません。
どちらかといえば、ナムジュン自身が自分のことを嘘つきだと思っている。
さっき書いたジョングクの事故に関しての日記でも書いてありましたが、ナムジュンはいつも明言することを避け、当たり障りのない返事をしたり、何も言わなかったり、そういった印象があります。
見捨てはしないが、助けもしない。自分にはそんな資格がないから。
本当はそんな大人じゃないとわかっていながら、それを伝える事せず、ジョングクが大丈夫じゃないことを分かっていながら励まし、大人のように振舞う。
ナムジュンは自分を嘘つきだと感じているでしょう。
そしてそれは自分が向き合わなくてはいけない自分の姿。
ナムジュンの卵
ナムジュンの卵はガラスが割れたような模様。
これはジョングクの卵と混じり合います。
ジョングクとナムジュンは、WINGSにおけるペアでもあります。
二人の卵は、ジョングクの卵の羽毛のような部分が少し削がれたように見えますね。
鳥の雛がモフモフとしていて、成長すると抜けていくようなイメージでしょうか。
ジョングクとナムジュンは似ている点があります。
「気になっていても、踏み込まない」所です。
ナムジュンがジョングクの見舞いに行った時の日記です。
たわいもない話をしたが、本当に大事な話は何一つしなかった
ジョングクは聞くべきだった
あの日の夜、兄さんたちはなぜケンカしたのかと、
どこに行ってしまい、なぜ戻らなかったのかと
しかし、ジョングクが聞かなかった
俺もそうだった
あの日の夜、なぜ黙って宿所を出て行ったのか、打ち明けなかったし、
テヒョンとの間にどんな問題があるのか、
ソクジン兄さんに聞かなかった
互いに投げかけるべき質問を俺たちは黙って飲み込んでしまった
二人が乗り越えなければいけない点は似ており、そのためペアだとも考えられますね。
まとめ
- ナムジュンは自分が破るべき殻に気づいている
- 卵の殻を破るために、ナムジュンは鳥を体内に入れた
- 電話の音が聞こえたのは、ナムジュンが殻を割ったから
次回はMAMAです。